工藤莞司先生の「商標、ここが肝心!」  

第8回 商標の使用許諾の実際

概要

=昨今はライセンス事業が盛況=

 



現在では、ライセンス契約は当たり前のことになり、権利のみならず様々な事柄についても、当事者間でライセンス契約が取り交わされている。東京を中心に話題を集めている建設中の”スカイツリー”についても、その名称や完成予想図像を使用した商品の使用料が定められたという(『名前使っても「タダ」』2010.8.5読売)。


他方、ゆるキャラの先駆けで人気の”ひこにゃん”について、彦根市が使用料の徴収を開始したところ、業者からの使用許諾の申請件数が激減したという(『ひこにゃん「有料化」敬遠 グッズ申請件数激減』2010.8.23産経)。


名称や図柄について、使用許諾をするときは、まず使用予定商品等を指定して商標権を取得することになる。商標法は、ライセンスとしては、商標権者に専用使用権の設定や通常使用権の許諾をする権原を与えている。専用使用権は使用権者のみに独占的な使用を認めるもので、商標権者も使用できなくなる。侵害に対しては、商標権者と同様の対応が可能であるが、その契約を有効とするには特許庁への登録が必要で、あまり利用されていない。


通常使用権は、単に使用権者に登録商標の使用を認めるだけのもので、商標権者の使用は妨げられず、また、他者へ重ねて通常使用権を許諾することができる。当事者間の契約だけで有効となり、特許庁への登録は必要ないが、登録したときは、その使用権は、商標権者が交代しても、新たな商標権者にも有効である。わが国のライセンス契約の大半は通常使用権であるが、登録を経ている例は多くないようである。


事業者間の様々な活動の中では、独占的通常使用権というものが許諾されている。使用権は当該契約一個のみとして他者には契約しないが、商標権者の使用も可能とするものである。また、通常使用権には、正式な契約を交わさなくとも、暗黙の了解で使用を容認しているという黙示の通常使用権も認められている。例えば、一昔前に暖簾分けした店舗での店名や商標の使用ではこの例が多いだろう。後日に備えて、契約を交わすことがベターではあるが、問題となっても、口頭了解や使用開始の経緯等を証明できれば認められることになる。


ライセンスに似たものとして、商標権の禁止権不行使契約というものもある。商標権者が使用者に対し、商標権侵害として、将来においても権利行使はしないという契約である。登録商標の類似範囲の使用に対して行われる。


このように、商標の使用許諾と言っても、様々な態様・形態がある中で、当事者間の交渉において、当該事業の活動に合ったより適切な使用許諾の態様・形態が選択されることになる。

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